「取引先から受け取った小切手を換金しようとしたのに、銀行から届いたのは<不渡り>の通知だった……」
そんな場合であっても、すぐには諦めないで!
不渡りはあくまで「金融機関が債務者からお金を回収できなかった」状態に過ぎません。
小切手や手形の裏書人への「遡求」、あるいは民事裁判を使い、支払ってもらうべきお金を回収できる可能性は決して低くないんです。
今回は小切手や手形の「不渡り」をテーマに、その概要から「不渡り」債権を持つことになってしまった場合の対策までを詳しくまとめました。
読み終えていただければ、出来る限り損の出にくい方法で立ち回る方法が分かりますよ。
★当座預金口座の残高不足によって発生する「第1号不渡事由」を前提として解説しています。
その他の不渡事由(呈示時間経過など)については、全銀協の公式HP p31をご覧ください。
そもそも「不渡り」って一体何?
そもそも「不渡り」「不渡処分」とは一体どういった状態を言うのでしょうか?
ご存知かとは思いますが、小切手・手形とは「A社がBさん(B社)へ○○円を支払いますよ」という約束を、紙の形で具現化したものです。
このうち「××日から出金可」という日付に関する制約が加えられているのが手形(約束手形/為替手形)ですね。
出金が可能になった手形、もしくは期限内の小切手は、通常なら金融機関に依頼を出すことで額面通りの現金を受け取れるのですが……。
支払元の会社(当座預金)に十分なお金が無く、支払いを実施できないというのが「不渡り」状態。
この場合は換金依頼を出した人の元へ、「不渡りにつき支払いができません」といった内容の通達が届きます。
言うまでもなく、これは債権者(支払「われる」側の人)にとってはショッキングな出来事。会社がそのまま倒産してしまえば、支払われるはずのお金を受け取ることができないからです。
そんな「不渡り」の被害者を増やさないため、一度不渡りを出した会社の名前は手形交換所加盟銀行、つまり全金融機関に通達されます。
第 64 条 交換所は、不渡届の提出があったときは、次の各号に掲げる場合を除き、交換日から起算して営業日4日目に当該振出人等を不渡報告に掲載して参加銀行へ通知する。 一 不渡届に対して異議申立が行われた場合 二 不渡届が取引停止処分を受けている者に係る場合 三 交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに第 68 条第1項または第2項に規定する 取消の請求があった場合 |
つまり一回不渡りを起こせば、「取引に注意が必要な会社」として金融機関に警戒されてしまうわけです。言うまでもなく、新しく銀行から融資を受けることは難しくなるでしょう。
さらに半年以内に2回目の不渡りを起こすと、銀行取引停止処分により2年間、融資を受けるどころか当座勘定、つまり当座預金を扱うことすら不可能に。
第65条 不渡報告に掲載された者について、その不渡届に係る手形の交換日から起算して6か月以内の日を交換日とする手形に係る2回目の不渡届が提出されたときは、次の各号に掲げる場合を除き、取引停止処分に付するものとし、交換日から起算して営業日4日目にこれを取引停止報告に掲載して参加銀行へ通知する。 一 不渡届に対して異議申立てが行われた場合 二 交換日の翌々営業日の営業時限(午後3時)までに第 68 条第1項または第2項に規定する取消の請求があった場合 第62条 2 参加銀行は、取引停止処分を受けた者に対し、取引停止処分日から起算して2年間、当座勘定および貸出の取引をすることはできない。ただし、債権保全のための貸出はこの限りでない。 |
不渡りが1回であれば事業を立て直せる可能性もありますが、取引停止処分が降りると再建はほぼ不可能。
これにより、6ヶ月中2回目の不渡りは「事実上の倒産」と見なされます。
不渡り小切手・不渡り手形を持つことになってしまったら
そういうわけで、不渡りを起こしてしまった会社にどうしても順風満帆……とは思えません。あなたが不渡小切手や不渡手形を持つことになってしまったら、債権回収のために出来るだけ早く行動に出るべきです。
ここからは、不渡り小切手・不渡り手形の債権者に認められた権利や行動について、紹介していきましょう。
①裏書人がいるのなら遡求権を行使しよう
あなたが不渡り「手形」を持つことになってしまったのなら……。
まずは、その裏面を確認してみてください。債務者(不渡りを起こした会社)以外にも社名や人名を見ることはできませんか?
この請求行為のことを「遡求」(そきゅう)、遡求を行う権利のことを「遡求権」と呼びます。
CHECK不渡り後の請求に時効はありますか?
★複数の裏書人がいる場合、どのような配分で遡求を行っても構いません。
例えば裏書人Aに全額遡求を行っても、裏書人A・Bそれぞれに半分ずつの支払いを請求してもOKです。
②債務者に訴訟も可……ながら回収できるかは別問題
あなたが持っているのが裏書人の無い債権の場合、もしくは裏書人が支払いに応じない場合、債務者(裏書人含む)へ民事訴訟を起こすことができます。
この場合は「手形訴訟」と呼ばれる「通常の訴訟よりも簡易迅速」(裁判所公式HPより)な方法を取ることが多いですね。
(小切手を問題にした訴訟も可、その場合は小切手訴訟と呼ばれる)
手形・小切手自体に不備が無い場合、何の落ち度もない債権者が負けることは考えられませんが……。
問題は「債務者が破産・倒産し、債権回収不可となる」こと。この場合はどうしようもなく、泣き寝入り以外に取れる方法はありません。
そのため、債権回収にはスピードが非常に重要。
相手に財産があれば、差し押さえ(強制執行)によりある程度回収を果たせる可能性もあります。
「支払ってもらえるはずのお金を支払ってもらえない」という場合には、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談されることを、強くおすすめします。
★債権額が安く、法律事務所を頼ると赤字が出そうという場合には、簡易裁判所へ相談されると良いでしょう。
小切手・手形の不渡りに関するよくある質問と回答
ここからは、小切手・手形の不渡りについてのよくある質問についてお答えしていきます。
①銀行に手形を、少し安い値段で買い取ってもらえると聞いたのですが……。
一般に「手形の割引」と呼ばれる制度ですね。
結論から言うと、不渡り手形や回収の見込みのない手形には使えません。
「手形の割引」を利用できるのは、「まだ支払期日の来ていない」「振出人(発行元の会社)もしくは裏書人の信用が高い」場合のみとなります。
★「手形を買い取ってくれる業者」というのは別に存在します。こういった業者であれば、銀行などに比べ信用の低い手形であっても安値ではありますが、買い取ってくれる可能性があるでしょう。
②不渡り後の請求に時効はありますか?
債務者(振出人)に対する手形の請求時効は支払期日から3年間です。(もちろん3年の間、会社が倒産せずに残っているかと言うのは別問題ですが……)
また、裏書人に対する時効は通常「手形の場合1年間」「小切手の場合6ヶ月間」と非常に短いため、お気を付けください。 時効にかかると相手方に支払い義務が無くなります。
★差し押さえなどを通し、時効は中断することができます。
③倒産した会社の債務を、元代表者などが負う必要は無いのですか?
債権者にとっては残念な話ですが、代表者らが(連帯)保証人となっていない限り、支払義務は及びません。
④不渡りを起こした会社が、銀行以外の消費者金融会社などからお金を借りることはできますか?
いくらノンバンクであっても不渡りを起こした会社にお金を貸すとは考えにくいです。
個人名義のカードローンなどであれば可能かもしれませんが、返済の目途を立てられずに泥沼にはまる可能性が非常に高く、資金調達の手段としておすすめはできません。
まとめ
これを起こすと全金融機関で不渡り情報が共有され、融資などを受けることが難しくなる。さらに6ヶ月以内に2回不渡りを起こせば事実上の倒産へ
★不渡り手形・不渡り小切手を持つことになってしまったら、「裏書人への遡求」あるいは「民事訴訟」により回収を図るのが得策。
金額が大きかったり、複雑な要素が絡んでいる場合などには専門家の力を借りよう
不渡りが起きると、債権者・債務者ともに「行動スピード」が重要となります。
債権を回収するためには、相手方が破産する前に何らかの法的手段を取れるよう、準備を進めておきたいものです。
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