障害年金とその受給額はいくら?2つの障害年金の違いと金額、申し込みの流れまで解説

障害年金とその受給額はいくら?2つの障害年金の違いと金額、申し込みの流れまで解説

病気やけがのために仕事や生活が制限される方は、「障害年金」を受給できる可能性があります。

ただし利用できる制度や受給額がいくらになるのかは、「加入している年金の種類」「障害の程度」によって異なります。

そこで今回は障害年金の種類や金額、申し込みの方法について詳しくまとめました。

目次

「障害基礎年金」を受給するための3つの条件

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」という2つの種類があります。

まずは国民年金保険によってまかなわれる「障害基礎年金」の受給条件について解説します。

①国民年金の加入中か、19歳以下または60歳~65歳のときに初診日があること

障害基礎年金は、国民年金によってまかなわれる年金制度です。

そのためこの制度を利用できるのは、原則として障害の原因となった病気やけがの初診日が「国民年金加入期間」にある方となります。

ですが基本的に国民年金保険は、20歳以上60歳未満の日本国民すべてが加入しています。

また20歳に満たない方と60歳以上65歳以下の方は例外扱いとなり、国民年金に加入していなくても障害基礎年金を受給できる可能性があります。

②1級または2級の障害があること

障害基礎年金の給付対象となるのは、1級または2級の障害のある方です。

該当するのは、身体または精神の障害により働いて収入を得ることができない方です。

障害厚生年金とは異なり、3級の障害は障害基礎年金の対象となりませんのでご注意ください。

またここで言う等級は、身体障害者手帳の等級と異なる場合があります。

1級障害の認定基準
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。

この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
2級障害の認定基準
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。

この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
3級障害の認定基準
※障害基礎年金の給付対象外
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。

障害の認定には医師の診断を要します。

③原則として国民年金の保険料納付済期間が3分の2以上であること

障害基礎年金を受け取るには、初診日の2ヶ月前の時点で「国民年金保険料を支払った期間または保険料免除期間」の合計が3分の2以上である必要があります。

つまり国民年金保険料を滞納している状態だと、2級以上の障害があっても障害基礎年金を受け取れない可能性があります。

自身の年金保険料の支払い状況を知りたいという場合には、お近くの年金相談センターにお問い合わせください。

またマイナンバーカードがあれば、インターネット上で年金保険料の支払い状況を確認できます。

【CHECK】日本年金機構公式サイト「ねんきんネット」

「障害厚生年金」を受給するための3つの条件

ここからは、厚生年金によってまかなわれる「障害厚生年金」の受給条件について解説します。

①厚生年金保険の被保険者である間に初診日があること

障害厚生年金を受給できるのは、厚生年金に加入している方です。

厚生年金に加入している期間中に障害の原因となった怪我や病気の初診日がある場合、この制度を利用できる可能性があります。

厚生年金に加入している方は、主に会社員です。

またパート・アルバイトであっても長時間働いている場合は、厚生年金に加入している可能性があります。

厚生年金は、原則として国民年金保険に「上乗せ」する形の年金制度となっています。

②1級、2級、または3級の障害があること

障害厚生年金では、1級・2級に加え3級の障害を持つ方も障害年金の給付対象となります。

3級障害の認定基準
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。

③原則として国民年金の保険料納付済期間が3分の2以上であること

障害基礎年金と同様に、障害厚生年金を受け取るためにも「国民年金保険料を支払った期間または保険料免除期間」の合計が3分の2以上である必要があります。

会社員の場合、年金保険料は給料から天引きされ、自動的に支払われます。

ただし厚生年金に加入する前に長期の未納期間がある場合などには注意が必要です。

【CHECK】日本年金機構公式サイト「ねんきんネット」

障害手当金(一時金)とは

障害手当金(一時金)とは、厚生年金に加入している方のみが利用できる制度です。

この制度では、けがや病気により「3級に満たない」障害が残った場合に一時的な手当金を受け取れる可能性があります。

参考障害手当金(一時金)の給付基準

労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

障害手当金を受け取れるのは、厚生年金に加入している方が初診日から5年以内に障害が治った、または固定された場合となります。

★障害基礎年金に、障害手当金(一時金)に相応する制度は存在しません。

障害年金の金額について

ここからは、具体的な障害年金の給付額について解説します。

①障害基礎年金の場合(子の加算額を含む)

厚生年金に加入していなくても受け取れる可能性がある、障害基礎年金の金額は以下の通りです。

障害基礎年金の年金額(令和4年4月分から)
1級:972,250円+子の加算額
2級:777,800円+子の加算額
子の加算額
2人まで 1人につき223,800円
3人目以降 1人につき74,600円

※18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子の数に応じて加算

上記の金額は、1年分の支給額となります。

例えば2級の障害を持つ方に原則として18歳以下の子がいる場合、1年あたりの障害基礎年金の金額は777,800円+223,800円=1,001,600円となります。

★20歳前に初診日がある場合、現在の収入によっては支給額が制限される可能性があります。

★業務上の病気やけがにより労災保険の対象となる場合は、給付額が制限される場合があります。

②障害厚生年金が上乗せされる場合(配偶者の加給年金額を含む)

厚生年金に加入している場合に受け取れる、障害厚生年金の金額は以下の通りです。

障害厚生年金の年金額(令和4年4月分から)
1級:
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額〕
2級:
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額〕
3級:
(報酬比例の年金額)
※最低保障額 583,400円
配偶者の加給年金額
223,800円

※生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算

障害厚生年金は、上記の金額を障害基礎年金に上乗せする形で給付されます。

上乗せされる金額は「これまでにどのくらい厚生年金保険料を支払ってきたか」、つまり給与や厚生年金の加入期間によって変動します。

報酬比例の年金額の計算については、日本年金機構の公式サイトをご覧ください。

具体的な数字が分からない場合は、「障害基礎年金に、最低でも年583,400円の年金が追加される」と考えて良いだろうと思います。

③年金は偶数月に2カ月分振り込まれる

障害年金の振込日は、障害基礎年金・障害厚生年金共に「偶数月の15日」です。

年金は1年分の金額が6回に分けて振り込まれます。

また15日が土日祝日と重なった場合には、振込日がその前日に繰り上げられます。

障害年金に申し込む方法

ここからは、障害年金を受給するための方法について解説します。

障害年金に申し込む方法
  1. 必要書類の準備
  2. 市役所(障害基礎年金)や年金事務所(障害厚生年金)に相談
  3. 年金請求書を受け取り提出
  4. 年金決定通知書などの送付
  5. 年金の振り込み(2ヶ月に1度)
    ※ここまで4ヶ月~

①障害年金の請求に必要な書類

障害年金の請求には以下の書類が必要です。

(1)年金請求書
┗市役所や年金事務所、ウェブサイトで入手可
(2)年金手帳または基礎年金番号通知書
(3)以下のいずれか1点戸籍謄本戸籍抄本戸籍の記載事項証明住民票住民票の記載事項証明書
(4)医師の診断書
┗障害認定日より3カ月以内の現症のもの
(5)受診状況等証明書
┗初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合
(6)受取先金融機関の通帳、キャッシュカードのコピー等
(7)病歴・就労状況等申立書
┗年金事務所やウェブサイトで入手可

子どもがいる場合や第三者行為により障害が生じた場合などには、追加の書類が必要となります。

詳細については以下の公式サイトをご確認ください。

【CHECK】日本年金機構公式サイト「障害基礎年金を受けられるとき」
【CHECK】日本年金機構公式サイト「障害厚生年金を受けられるとき」

②年金請求書などを年金事務所や役所に提出

必要書類は、以下の窓口に原則として持ち込みで提出する形となります。

障害基礎年金住所地の市区町村役場の窓口
障害厚生年金お近くの年金事務所または街角の年金相談センター

障害厚生年金は障害基礎年金に上乗せする形で支払われますが、書類の提出先は1つで構いません。

③年金決定通知書が届くのは目安として3カ月後

障害が認められ、年金決定通知書や年金証書が自宅に届くまでには年金請求書などの提出から3ヶ月程度を要します。

この期間内の生活費が不足する場合などには、行政の融資制度などを利用できる可能性があります。

年金請求書を提出する際に、併せて相談してみると良いでしょう。

④年金証書が自宅に届いてから約1~2カ月後に受給開始

年金の振込が始まるのは、年金決定通知書が届いてからさらに1~2ヶ月後となります。

このように、障害年金の申し込みから受給開始には4ヶ月以上を要します。

また必要な書類が不足している場合などには、さらに時間がかかる可能性があります。

障害年金についての相談先

年金についての相談は、お近くの「年金事務所」「年金相談センター」が対応しています。

【CHECK】日本年金機構公式サイト「全国の相談・手続き窓口」

また障害基礎年金へ申し込む場合であれば、その窓口である市役所などに問い合わせを行っても良いでしょう。

また日本年金機構は、電話による相談窓口「ねんきんダイヤル」を設置しています。

「書類の揃え方が分からない」「必要な書類を入手できない」などの問題が生じた場合には、これらの窓口をご活用ください。

ねんきんダイヤル:0570-05-1165(有料)

月曜日:午前8:30 ~午後7:00
火~金曜日:午前8:30 ~午後5:15
第2土曜日:午前9:30 ~午後4:00

まとめ

ポイント
  • 障害基礎年金とは、主に国民年金保険に加入している方が利用できる障害年金。
    障害が2級以上で、長期間の未納期間がなければ利用可能
  • 障害厚生年金とは、主に会社員の方が利用できる障害年金。
    障害基礎年金と違い3級の障害も給付の対象となる
  • 障害年金の申し込みから受給までには4ヶ月以上が必要となる。
    また申し込みには市役所や年金事務所への来所が必要
  • 全国に設置されている「年金事務所」や「年金相談センター」で、年金の支払い状況の確認や年金についての相談が可能

怪我や病気により生活が著しく制限される場合には、障害年金への申し込みが可能です。

ただしその利用条件は、加入している年金や年金保険料の支払い状況によっても異なります。

不安や疑問がある場合には、お近くの年金事務所などへ個別に相談してみるのが有効でしょう。

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