国民健康保険を支払えない場合の対処方法

国民健康保険を支払えない場合の対処方法

「未納分の国民健康保険料の督促状が届いたけれど、こんな金額払えない!」
「保険料を支払ったことも請求が来たことも無いけれど、就職に影響はないのかな?」

個人事業主やフリーター、そして無職の方などが加入することになる「国民健康保険」。その請求は高額なもので、どうしても継続的な支払いが難しいこともありますよね。

ただし、加入手続きを怠ったり、請求を無視するのは絶対にNG。

予期せぬ病気や怪我に見舞われたときに困るのはもちろん、余計な遅延損害金(延長金)を支払わされたり、最悪の場合差し押さえにまで至りかねません。

ですが、相談次第で保険料の免除・減額が認められる可能性がありますよ。

今回は国民健康保険料の支払いについて、未納時のデメリットやどうしても支払いができない場合の対策、その他よくある質問などをまとめました。

読み終えていただければ、あなた自身の「もしも」に備える方法が分かりますよ。

このページは「国民健康保険の加入者、もしくは加入手続きを済ませていない方」もしくは「国民健康保険の請求が届いた方」を対象としています。
あなたが持っている社会保険証の下部に「全国健康保険協会」の文字があるのなら、知らないうちに保険料は支払われているはず。保険の未納・未加入について気にする必要はありません。

目次

国民健康保険料の未納・未加入にはどんなデメリットがあるの?

まずは、「扶養や社会保険から抜けて、国民健康保険に加入しない」「加入したはいいものの、保険料を支払わない」場合のデメリットについて紹介していきます。

①一番怖いのは、予期しない怪我や病気

国民健康保険に加入しないことで(あるいは期限が切れることで)一番怖いのは、言うまでもなく予期しない怪我や病気でしょう。

ご存じの通り、国民健康保険に加入している69歳以下の方は医療費の本人負担が3割で済みます。残り7割は保険が賄ってくれるわけですね。

例えばインフルエンザに掛かり病院に行った場合、通常であれば自己負担額は2,000円弱程度。(薬代含まず)ここで仮に健康保険証を持っていないとすると、病院に行くだけで6,000円程度のお金を取られてしまうわけです。

これくらいの差なら「毎月保険料を支払い続けるより、全額自己負担の方がマシ!」と思えてしまうものですが……。

平成28年版の生命保険文化センターの調査(PDF)によると5年以内に入院経験のある方は14.8%に上ったとのこと。6~7人に一人の割合ですね。

また、入院経験者の「自己負担額」についても以下のようなデータが掲載されていました。

注意してほしいのが、このアンケートは公的保険(社会保険や国民健康保険など)への加入を前提に取られていること。
つまり公的保険に加入している方であっても一度入院すると、十万円単位で入院費用が発生してしまうわけですね。

仮に保険に入っていない状況で入院を強いられるといくらの医療費を請求されてしまうのか、考えるのも怖いくらいです。

ちなみにきちんと保険に加入していれば「高額医療費制度」という、その名の通り「高額な医療費(目安として月8万円以上)が発生したとき、差額を返金してもらえる」制度を利用できるのですが……。

健康保険に加入していないと、こういった公的な支援を受けることもできません。

どうしても入院・大きな病気と言うと他人事のように思ってしまいがち。確かに一切病院のお世話にならないのなら、結果的に「保険料の払い損」となってしまうこともありますが……。
万が一のことを考えると、結局は「保険料を支払って安全を買う」のがベターかと思います。

余談ですが、健康が取り柄……と思っていた私、一昨年に都心で40度の熱を出して倒れてしまい、救急病院のお世話になりました。
幸い入院とはならず数時間(夜遅くから翌朝まで)の滞在ではありましたが、後日請求された金額は約1.1万円。もし保険に入っていなかったら、と思うとやはり怖いですね。

②保険料の未納タイプ別・再加入方法と今後のリスク

健康保険証を持っていないことのデメリットは上に紹介した通り。

そして今後改めて国民健康保険に入ろうという場合、もしくは今後も絶対に保険料を支払うつもりはないという場合であっても、「国民健康保険への加入手続きを行っているか、そうでないか」によって今後の流れは大きく変わってきます。

ここでは、あなたの加入状況別・国民健康保険への再加入方法と今後のリスクについてまとめました。

(1)一度も請求が届いたことのない場合

もしもあなたが誰かの扶養に入っていないにもかかわらず、「有効な保険証を持っていないし、特に保険料の請求などが来たこともない」という場合、「国民健康保険に実質未加入」状態だと考えられます。

一応日本では「国民皆保険」と言って、国民全員が自然とどこかの保険制度に加入するための制度が敷かれているのですが……。
結局のところ自分で国民健康保険への加入手続きを行わないと、役所側もあなたが保険に入っていないことに気づきません。

こういった例は「退職などにより社会保険から外れた後」「扶養から外れた後」「住民票を移した後」などに起こりやすいですね。

国民健康保険へ新規加入を希望する場合には、とりあえず「市区町村役所に行って相談する」ことになります。

ただし国民皆保険制度により、「保険に入っていない」という状況が公に認められることはありません。空白期間がある場合には、その分の保険料をさかのぼって支払う必要があります。

この「さかのぼって支払う」金額は、市区町村によって最長2年分+延滞金の場合と、最長5年分+延滞金の場合があります。(市区町村が「保険料」「保険税」、どちらの区分で徴収しているかにより時効が変わります)

仮に一括支払いができない、という場合でも分割納付が可能ですので、まずは相談に出向いてみることをおすすめします。以前社会保険に加入していたのなら、その証拠となる書類(社会保険証など)などを持っていけると良いですね。

この場合、おそらくは加入手続きを済ませない限り(あるいは市区町村が調査に乗り出すなどしないかぎり)、請求書・納付書や督促状が届くことも、それに基づき処分されることもありません。良くも悪くも「現状維持」のままです。

(2)請求書や督促状がすでに届いている場合
すでにあなた宛てに健康保険料の請求書や督促状(とくそくじょう)が届いている場合、こちらは本当に無視できません。
あなたは「保険に加入しているにもかかわらず、その代金を支払っていない人」と認識されています。

このまま請求を無視し続けていると、差し押さえを実施される可能性もあるでしょう。つまりあなたの財産、もしくは今後の給与の4分の1が自動的に保険料の支払いに充てられる、というわけですね。

このことは、各自治体などの公式HPにも明記されています。

1 督促や催告
 納期限までに保険料(税)の支払いがない場合は、区市町村による督促や催告があります。
2 給付の制限
 納期限から1年6ヶ月を経過しても滞納をしていると、保険給付が差し止められたり、給付の全部又は一部が滞納している保険料に充当される場合があります。
3 滞納処分
 長期間滞納すると、法律に基づいて預貯金、給与、生命保険(契約)など、財産の差押えによる滞納処分を行います。

出典:東京都福祉保健局公式HP

こちらに記載はありませんが、支払いが遅れれば遅れるほど年9%程度の延滞金が課せられ、請求額は膨らんでいきます。

延滞金が一番安いのは、今現在です。
すでに督促状が届いているのなら、できる限り早い段階で対策(後述)を取る必要があるでしょう。

国民健康保険へ実質未加入の場合と異なり、こちらでは時効の成立が難しくなります。5年以上前の支払いも、さかのぼって支払わなければならないことでしょう。
これは督促状の送付により時効が中断されるからです。

どうしても国民健康保険料が支払えないときには

それではどうしても国民健康保険料を支払えない、という場合、あなたはどうすれば良いのでしょうか?
これに関しては、どの自治体についても「できるだけ早く相談を行う」のが模範解答となるようです。

納付が困難な場合は、そのままにせず、お早目にご相談ください。
失業、災害または病気などのやむを得ない事情があるときは、減額または免除される場合があるほか、分割して納める方法もあります。

出典:宮城県仙台市公式HP

前年中所得が一定基準以下の世帯や、災害、退職や廃業等による所得の減少等で保険料を納めるのにお困りの方は、保険料の軽減・減免ができる場合がありますので、お住まいの区の区役所保険年金業務担当へご相談ください。

出典:大阪府大阪市公式HP

何らかの事情で保険料を納められないときは、早めに国保徴収係まで納付相談を行ってください。そのまま放置しておくと一度に納める国民健康保険料が多額になります。

出典:東京都中野区公式HP

記載されている通り、「保険料が支払えなくても仕方のない事情」(所得が低い、失業したなど)が認められれば保険料を免除してもらえたり、減額してもらえる可能性があります。

どうやっても保険料の満額支払いが難しい、支払いを行うと生活に支障が出る、という場合には多くの延滞金が発生する前に、各役所の窓口に相談を行ってください。

「(市区町村名) 健康保険料 相談」などで検索を掛ければ、お住まいの地域の相談窓口が分かるかと思います。

国民皆保険制度により、一度加入した国民健康保険は社会保険など、別の公的保険制度に加入するまで脱退することはできません。

国保の加入・納付や納付し忘れに関するよくある質問と回答

ここからは、国民健康保険料の加入・納付に関するよくある質問に回答していきます。

個別に相談を行いたい場合には、お住いの自治体の窓口をご利用ください。

①1ヶ月分だけ支払いを忘れてしまいました。何か罰則などはありますか?

納付期間が少しくらい切れていても、コンビニや金融機関窓口などで支払いが可能です。

保険料が2万円のとき、30日間・金利9%で延滞した場合の延滞金は147円程度。さして気にする必要はありません。

新しく請求書や督促状が送られてくる前に、できるだけ早く支払いを済ませましょう。

②国民健康保険料を支払ったり支払わなかったりするとどうなりますか?

支払いが済んでいない分のみ延滞金が発生し、後日改めて督促状などが届くかと思います。
経済的に支払いが厳しいのなら、自治体窓口で相談を行ってください。

③国民健康保険料を支払っていない状態で、社会保険に加入することはできますか?

問題なく可能なことが多いようです。いわゆる「社会保険」を取り扱う全国健康保険協会と、国保を取り扱う各自治体に繋がりがないからですね。

社会保険に加入できれば、その後の保険料は自動的に給与から天引きされます。
国民健康保険料の請求が届いていない状況なら、過去の未納分を支払うことなく新しい保険に入れることが多いでしょう。

滞納分の支払いが必要になるかは自治体によるようです。不安がある場合には直接、電話などで役所に問い合わせてみることをおすすめします。

国民健康保険料の請求書が届いている場合は国民健康保険の脱退手続きのため、請求額の清算が必要となります。
(未払いが就職先の会社にバレることはありません)

④社会保険に入っているのに国民健康保険料の請求が来たのですが……。

国民健康保険の脱退手続きが済んでいないと考えられます。
同時に2つの保険に加入する必要はありません。現在の社会保険証などを持って、役所へ出向きましょう。

仮に二重に保険料を支払ってしまった場合には払い戻しを受けられます。

保険料の請求は「世帯主」へ向かいます。
生計を同じくする家族が国民健康保険に加入しているのなら、この分の請求が届いているのかもしれません。請求内容をご確認ください。

⑤延滞金を含む高額請求が届きました。カードローンやキャッシングを使ってでも一括で支払った方がいいですか?

基本的にはやめておいた方が良いでしょう。カードローンクレジットカードのキャッシング枠の金利は国民健康保険料の延滞金金利の2倍程度となるからです。

役所へ相談に行き、分割払いの相談を行うのが先決です。

まとめ

★保険証を持っていないと思わぬ病気や怪我に見舞われた場合、すべての料金を自分で負担しなければならない。
高額医療費制度も利用できず、生活の破たんを招くため最低限の保険には必ず加入しよう
★現在一度も請求が届いていないのなら、最長2年または5年分の保険料+延滞金で新規加入が可能
★すでに請求や督促状が届いている状況なら、踏み倒しどころか時効の成立すら困難。差押えにより財産が没収されることも十分考えられる。
★とにもかくにも「請求額を支払えない」と感じたら、早めに市区町村の窓口へ出向くのが最重要!場合によっては支払い額を軽減あるいは免除してもらえる

結局のところ、人によって状況は異なりますので何か不安なことがあったり、トラブルが発生した場合には速やかに窓口で相談を行うのがベスト。
大病などをきっかけに後悔する前に、何とか最低限の保険には加入しておきたいところです。

その他、支払について不安がある場合には早めにお住いの自治体に問い合わせを行うことをおすすめします。

目次