「住宅ローンへ申し込みたいと思っているけれど、キャッシングの利用歴が審査に影響するなんて噂が……。
結婚前に使ってた昔のローンなら大丈夫かな?」
いいえ、解約のタイミングによっては数年前の延滞情報が今でも残っているかもしれません。
「住宅ローンの審査前にカードローン(またはクレジットカードのキャッシング枠)を解約できればOK」といった情報はインターネット上でよく見かけますが、信用情報に関しての基礎知識を身に着ければそれは必ずしも正しくないことがわかります。
今回は信用情報(あなたのクレジットカードやローンの利用履歴)の仕組みに基づいて、「実際、カードローンの利用履歴は住宅ローンの審査で不利に働くのか」という点をはじめ、「現在キャッシングを利用中の場合の影響」「配偶者に借入がバレるか」など、よくある疑問を解消できるようまとめてみました。
読み終えていただければ、キャッシングを利用したことのあるあなたが今、住宅ローンへ申し込みを行うべきかわかります。
キャッシングの利用履歴があると、住宅ローンの審査は不利になる?
過去のキャッシング歴は、住宅ローンの審査で不利になるのでしょうか?
詳しく解説していきます。
①「滞りなく返済し、解約した」情報が審査の上でマイナスとなることはほぼない
もしもあなたがキャッシング(カードローン、もしくはクレジットカードのキャッシング枠)を利用していた場合であっても……。
延滞することなく毎月返済を行った上で解約を済ませているのなら、審査に影響はないと言って良いでしょう。
解約を済ませたのが5年以上前であれば、キャッシングを利用していたことさえ気付かれることはありません。
②契約期間中および契約終了(完済・解約)時から5年以内の契約で延滞があると審査は不利になる
ここからがやや面倒な点なのですが……。
あなたの信用情報は「個人信用情報機関」と呼ばれる場所に保存されています。
この個人信用情報機関は「CIC」「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」「日本信用情報機構(JICC) の3つ存在し、それぞれ記録している情報にやや違いがありますが、おおむね共通するのは、各金融機関との契約情報は契約終了後も5年間残るため、延滞などの問題があれば、完済して契約終了しても、その後5年間は審査が不利になる場合があります。
分かりにくいため、例を挙げてみました。
2016年4月 | Aさんはアコムでお金を借りた。 |
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2016年5月 | 返済が遅れ、CICに「返済遅れ」の情報が記載された。 |
2017年5月 | Aさん、アコムを解約 |
↕CICの情報は解約後5年間残る CICに返済遅れの記載、審査は不利に | |
2022年5月 | CICからアコムとの契約情報の削除 |
いわゆるブラックリスト(信用情報機関)に載るのは「61日以上もしくは3ヶ月以上の支払い遅延」、或いは1,2カ月の支払い遅延が何度もあるなども「信頼を著しく損ねる契約不履行」として登録される可能性があります。この基準未満の延滞であれば審査落ちとなる可能性は少ないでしょう。十分な返済能力が認められれば、返済遅れの情報が残っていても住宅ローンの審査に通過できることはありますが……。
審査が不利になることは否定できず、仮に審査に通ったとして高めの金利が適用される可能性も低くはないでしょう。
履歴が消えるのは「契約終了時から5年後」となります。
何日の延滞から信用情報に記載されるか、明確な基準は設けられていません。
数日程度の遅延であれば記録されないことが多いものの、心配があるのなら個人信用情報を開示してみてください。
クレジットカード・消費者金融系であれば「CIC」、銀行系ローンであれば「KSC」への開示請求をおすすめします。
CHECK個人信用情報の開示方法と開示書の見方
★それぞれの信用情報機関は連携しているため、情報が共有されますし、3つの信用情報機関と関わりを持っていない大手金融業者・信販会社(クレジットカード会社)はありません。カードローン、もしくはキャッシング枠を利用しているのならほぼ確実に1ヶ月ごとの返済情報が記録されています。
街金でのみお金を借りた場合には1ヶ月ごとの返済情報が記録されていないこともありますが、稀有な例でしょう。
③解約から信用情報への登録までには最大2ヶ月ほどのタイムラグが発生するため注意
住宅ローン等の大きなローンを組む際、カードローン・キャッシング枠の契約はないに越したことはありません。
新しくお金を貸す銀行にとっても、「いつでも他の会社から借りられる人」よりは「他の会社と契約を結んでいない、クリーンな人」を優遇するのは当然ですよね。
ただし、「カードローンの延滞はしていないから大丈夫。解約を済ませたらすぐに住宅ローンへ申し込もう!」というのはやや危険。
これは見逃されやすい「信用情報が登録されるまでのタイムラグ」のせい。せっかく万全の状態でカードを解約しても、その情報が反映されるまで最大2ヶ月ほどのライムラグが発生することがあるんです。
つまり、この間に住宅ローンへ申し込みを行うと解約しているカードローンであっても契約中、つまりいつでも借りられる状態と見なされ、審査が行われてしまうわけですね。
このタイムラグについて、実際に三井住友銀行のカードローン窓口へ問い合わせてみた結果をご覧ください。ただし、銀行や支店によってもそれぞれ異なるので、ご参考まで。
私どもの加盟している個人信用情報機関が3つございます。
日本信用情報機構(JICC)というところですとご解約のお手続きをしていただく曜日によって変わるんですけれども、大体ご解約いただいたお日にちの「翌々営業日」には信用情報機関へ保証会社のほうから報告をしております。
それで、本支店がCICという信用情報機関でございます。ここが1ヶ月ごとのデータ更新となります。
20日ごとに保証会社に届いたデータを、翌日CICという信用情報機関に報告しております。あくまで保証会社に届いた分となりますので、余裕を持ったお日にちが必要になるので、毎月中旬までにはご報告いただければと。
もう一社ありまして、こちらが全国銀行個人信用情報センター(KSC)というものになります。
これは、その月の最終銀行営業日の3時頃までの情報を翌月の10日頃反映しております。
ですからお急ぎですと毎月中旬までにご解約のご検討などしていただければと思います。
あともう一点注意事項なのですが、今私がご案内したサイクルというのが保証会社、もしくは私どもからデータを送るタイミングであって、その後個人信用情報機関がいつ情報を更新するかというところまでは私どもは把握できませんので、その点はご注意をお願いします。
(【20社の解約方法掲載】使わないカードローンは解約を!信用情報のタイムラグって?より)
消費者金融系の会社であれば対応は速い(アコムは翌営業日にデータ送信)ようですが、その後「信用情報機関がいつ情報を更新するか分からない」というのは大きな心配の種となります。
CICの公式HPによると、解約情報の登録・更新は「月次」で行われているようです。
よって、カードローンの解約反映後に住宅ローンへ申し込みを行いたい場合には「解約から2ヶ月程度経った上で申し込む」もしくは「信用情報を開示し、解約が完了していることを確認した上で申し込む」ことをおすすめします。
★各個人信用情報機関ごとの「解約」情報確認方法については「カードローンの解約」ページをご覧ください。
★カードローンの契約中(あるいは解約情報が反映されていない状態)であっても、住宅ローンの審査に通過できることはあります。ただし審査が不利になることがあります。
現在キャッシングを利用中でも、住宅ローンは組める?
ここからは現在キャッシングを利用中、というあなたに向けて住宅ローンの審査への影響を紹介して行きます。
①十分な返済能力が認められれば審査通過は可能ながら、返済負担率に注意
結論から言うと、キャッシングの利用者は住宅ローンの審査において不利となります。
その他の無担保ローンに比べ圧倒的に金額の大きくなりやすい住宅ローンですから、銀行の審査も慎重。
単純に「カードローンに頼らなければならないほど生活が不安定なのか」「浪費癖があるのか」といった不安を抱かせるのはもちろん、「いつでも他の会社から借りられる=返済が必要になる=支払い能力が上下しやすい」という懸念もあります。
もしも使っていないローン(あるいはキャッシング枠)があるのなら、解約(クレジットカードの場合、キャッシング枠を0円に変更)すれば、住宅ローン以外の負債を抱え込む心配はなくなります。
キャッシングを利用中であっても十分な返済能力があれば、審査に通過できることはあるものの……。
やはり、キャッシングの利用額などによっては、審査落ちのリスクが上がることは事実ですから、清算できるに越したことはありません。
★カードローン契約中に住宅ローン審査へ通過できた例
30代男性/会社員/年収650万円 |
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30万円のカードローン借入ありましたが2800万円で通過できました。 |
30代男性/公務員/年収500万円 |
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付き合いでキャッシングカードを持っていました(使ってはいません)が、無事に審査に通過できてよかったです。 |
ただし、ここで問題になるのが「総返済負担率」。
これは「住宅ローンを含めたすべてのローンの返済額が、収入に占める割合」のことを指します。例えば年収300万円で年間返済額が100万円(月約8.3万円)なら、返済負担率は約33%となるわけですね。
住宅ローンを組む際、フラット35の場合は、総返済負担率の上限は年収400万円以上で35%以下です。(年収400万円未満でフラット35を利用する場合には上限30%以下)
ここでカードローンの借り入れがかさんでいると、月々住宅ローンの返済に充てられる金額が少なくなってしまうわけですね。
これにより、希望額を借りられなかったり予定よりも借入期間が長くせざるを得なくなってしまう、といった問題が発生します。
返済負担率は35%が上限とされる場合でも、生活の安定などを考えると25%以下に設定するのが理想的。
すでにローンを借りている場合には、「現在の月あたりの返済額+希望している月々の住宅ローン返済額」が収入のどのくらいを占めているのか計算してみると良いでしょう。
★どうしてもカードローン(キャッシング枠)を清算できない、という場合には金融機関に掛け合ってローン限度額を下げてみるのも良いでしょう。
解約に比べ効果は薄いですが、大きな限度額をもったままでいるよりは、ローン合計額は少なくなり負担も軽くなります。
★自動車ローン、多目的ローンなどカードローン・住宅ローン以外の返済があるのなら、こちらを含めて返済負担率を計算する必要があります。
<「住宅ローンの申し込み先銀行のカードローン」なら問題にならないことも>
基本的には不利となりやすいカードローン・キャッシング枠ですが……。
例外的に「住宅ローン申込先の銀行のカードローン」であれば、クレジット履歴などがすぐに確認できるため、延滞などがなければ両ローンの金利優遇などを受けられることがあります。
さらに「住宅ローンの金利を下げるためにカードローンを作ってくれ」と言われた報告も寄せられており、借り入れ先が同じであるなら一概にカードローンの存在がデメリットになるとは言えないこともあります。(もちろんカードローンを利用の際は返済負担率を一定以下に保つ努力が必要です。)
この傾向が強いのは主に地銀の住宅ローン。
もしもカードローンの借り入れ先が地銀で、かつ同じ銀行で住宅ローンを組みたい、という場合にはその状態のまま相談に向かってみても良いでしょう。
また、「今はカードローンが残っているけれど、これを清算したら住宅ローンに申し込みたい」といった場合、申し込み先の銀行のカードローンへ借り換えを含めて検討するのも一考です。
★審査の厳しいメガバンクやインターネット銀行系の住宅ローンを検討している場合、借入先に関わらず「返済能力に不安がある=即審査落ち」となることも珍しくないため、カードローンをきっちり清算・解約した上で申し込みを行うとよいかもしれません。
②審査の結果、「カードローンを解約するならOK」という答えが出たなら素直に従おう
カードローンの契約が残ったままで住宅ローンへ申し込みを行った場合、稀に「カードローンを解約するなら審査に通せます」といった回答が出ることがあります。(主に比較的柔軟な審査を行う地方銀行、信用金庫など)
この場合は素直に金融機関の指示に従い、カードローンを清算・解約しましょう。住宅ローンの頭金(自己資金)に手を付ける必要があるかもしれませんが、審査に通れなければそもそも自己資金を使うこともありません。
このとき、銀行側から「解約証明書」(完済証明書)をもらってほしい、という指示を受けることがあります。
これはカードローンの解約時にオペレーターや窓口の担当者へ伝えれば問題ありません。電話で解約を行うタイプのローンの場合、解約証明書は後日郵送されてきます。
住宅ローンとキャッシングに関するよくある質問と回答
最後に、住宅ローンとキャッシングについてのよくある疑問を解消していきます!
①住宅ローンの審査で、カードローンの利用が配偶者にバレることはありますか?
あなたが現在キャッシングを利用中で、配偶者が居合わせているところに「このキャッシングを解約すれば審査に通せます」と言われた場合などを除き、過去・あるいは現在の借入が直接バレることはありません。
住宅ローンの手続きを契約者おひとりで行うのなら、さほど心配する必要はないでしょう。
②夫に内緒でカードローンを使っています。住宅ローンの審査の際、不利に働きますか?
カードローンの利用規約には、「配偶者の信用情報を審査時に閲覧する」と明記されていることが多々あるものの……。
都市銀行、地方銀行、インターネット銀行、信用金庫などさまざまな住宅ローンの同意事項を確認したところ、配偶者の信用情報を登録すると書かれている金融機関はありませんでした。つまり、配偶者に内緒の借金があっても、家族カード利用の借金などでなければ、それが金融機関側にチェックされる可能性はほぼないでしょう。
ただし、あなたが住宅ローンの保証人となる場合は話が別。
このとき多数の借入があれば、保証人として認められないことがあります。不安があるなら、カードローンを解約しておくことをおすすめします。
③カードローンの解約が済んでいるかわかりません。どうすれば確かめられますか?
最も簡単なのは、契約していた金融機関に電話を掛けて確認してもらうことでしょう。
パスワードなどが確実に分かるのなら、インターネット会員サービスにログインしてみるのも有効です。
その他、信用情報を開示という手段を使っても契約情報を確認することができます。
CHECK信用情報の開示について
まとめ
★過去のカードローン・キャッシングの利用履歴は、延滞などがなければさほど問題にはならない。
ただし「解約したのが今から5年以内で、返済延滞を行った」場合には悪い情報が残っているでしょう。不安なら信用情報の開示を!
★現在カードローンを利用中の場合、ローン金額によっては住宅ローン頭金(自己資金)に手を付けたり住宅ローンへの申し込みを延期しても清算・解約すると良い場合もあります。解約~信用情報の反映までには最大2ヶ月ほどのタイムラグが発生するため注意
★各金融機関における住宅ローン規約を見てみると、配偶者の信用情報は閲覧されない模様。
保証人にならないのなら、配偶者の情報が審査に影響する可能性は低い
完済後から5年間残ってしまう、カードローンやクレジットカードの支払い延滞情報。
ただし最も重要な審査基準は「現在の返済能力」。
十分借りて返せるだけの力があると判断されれば、何かしら審査の上で不利になる要素があっても、その度合いにもよりますが、通過できる可能性はあるでしょう。
……とはいえそんな要素はないに越したことはありませんので、余裕があれば信用情報が綺麗になったことを確認した上で申し込みを行いたいですね。
CHECK信用情報の開示方法と開示書の見方
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