国の教育ローンと奨学金の違い

    この記事の監修者
    大竹麻佐子先生/ファイナンシャルプランナー (CFP認定者)
    ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表。「ココロとカラダとおかねのバランスを整えよう」をキーワードに多方面で活躍。

    何かと比較されやすい「国の教育ローン」(教育一般貸付)と「奨学金」。奨学金にはいろいろ種類がありますが、メインとなるのは日本学生支援機構が取り扱うものでしょう。
    実はこの2つのローン、「教育資金用」ということ以外はまったくの別モノ。融資の方法から借り入れ上限額、返済に至るまで、大きな違いがあります。

    今回は国の教育ローンと奨学金について、「どっちを選べばいいの?」「併用は可能なの?そのメリットは?」といった疑問にお答えしていきます!

    ★「国の教育ローンって銀行とどう違うの?」「奨学金って何?」という方は、『国の教育ローンについて』『奨学金とは』のページを先に読んでみてください。

    国の教育ローンと奨学金の違い

    まずは、ふたつのローンの特徴と違いを把握していきましょう!

    ①2つのローンの違いのまとめ

    国の教育ローン奨学金(日本学生支援機構)
    金利1.71%
    (2019年5月現在)
    1%前後
    ※成績優秀者の場合0%
    取り扱う組織日本政策金融公庫日本学生支援機構
    学生一人あたりの限度額350万円月2万円~12万円(大学)
    ×在学年数
    ※令和2年4月より「高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)」開始予定
    詳細学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度:文部科学省
    ※大学・学部によって増額あり
    返済義務を負う債務者20歳以上の原則保護者学生本人
    申し込み期間随時現在通学している学校が指定する期間
    基本は予約採用であり、高校窓口から申し込みを行う
    緊急性がある場合、例外的に臨時採用もあり
    貸付タイプ一括貸付月々分割貸付
    返済開始時期借り入れの翌月または翌々月
    ただし在学期間中は利息のみの返済可
    卒業後
    (場合により、救済制度あり※1)
    返済期間15年以内
    (交通遺児、母子・父子家庭、世帯年収200万円以下の場合18年)
    借り入れ金額により変動
    詳細日本学生支援機構公式HP「返還期間」
    主な使いみち対象は1年分の教育資金

    例:

    • 学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)
    • 受験費用(受験料、受験交通費、宿泊費)
    • 住居費用(家賃等)
    • 教科書代、教材、パソコン購入費、学生の国民年金保険料など
    学費や月々の生活費など
    ※1 月々の返済額を1/2または1/3に減らせる「減額返還制度」と月々の返済を先に延ばせる「返還期限猶予制度」があります。
    詳細JASSOの制度 減額返還・変換期限猶予

    これだけを挙げてみても、ふたつのローンがまったく別モノということがわかりますね。

    ②最も大きな違いは「契約者が学生自身か、保護者か」という点

    学生自身が契約する奨学金と違い、国の教育ローンの契約者は主に保護者。ここがふたつのローンの最も大きな違いでしょう。
    国の教育ローンを契約できるのは20歳以上の安定した収入のある方のみとなっています。

    返済の責任を負うのは契約者ですので、奨学金は学校卒業後に学生自身が返済していくことが求められます。

    ③借り入れ金額は圧倒的に奨学金の方が大きい

    まず第一選択肢としては、奨学金を選びましょう。
    教育ローンよりも利率が低く、4年間の総額としてまとまった金額を確保できるためです。

    在学中は支払いが発生しないため、親権者の収入状況に不安がある場合のリスク対策としても使えます。
    奨学金を借入れても、使わない、不足分のみ使い、卒業時に残額を返還するということもできますからね。
    第二種奨学金で借りられる金額は、以下のようになります。(第一種奨学金については日本学生支援機構公式HPをご覧ください。)

    ★第二種奨学金の学校別借入可能額

    大学生、短大生
    高等専門学校(4年、5年のみ)
    専修学校月2万円~12万円(1万円きざみ)
    大学生
    (私立大学の医・歯学課程)月2万円~12万円(1万円きざみ)
    さらに、上記12万円に+4万円の増額可能
    大学生
    (私立大学の薬・獣医学課程)月2万円~12万円(1万円きざみ)
    さらに、上記12万円に+2万円の増額可能
    大学院生月5万円
    月8万円
    月10万円
    月13万円
    月15万円
    大学院生
    (法学)月5万円
    月8万円
    月10万円
    月13万円
    月15万円
    さらに、上記15万円に+4万円または+7万円の増額可能
    ※ ただし増額分については、返済時の利率が通常分と異なるため注意(私立大学の医・歯学課程、薬・獣医学課程、法科大学院)

    通う学校の種類ごとに、指定された金額をそれぞれ選択可能です。ちなみに月10万円を4年間借り続けると、借り入れ総額は480万となるわけですね。ここに所定の利息が追加されます。

    ただし、借り入れ金額が大きいというのはそれだけ返済が大変だということ。返済のことを考えて、必要最低限だけ借り入れを行うようにしましょう。
    日本学生支援機構公式HP:奨学金貸与・変換シミュレーションも利用してみてくださいね。

    ④卒業後に本格的に返済をはじめたいなら、奨学金を選ぼう

    借り入れの翌月または翌々月から返済が始まる国の教育ローンと違い、奨学金は卒業後に返済が始まります。学生のままでは十分な支払い能力がないからですね。
    また、利息を取られる第二種奨学金であっても在学中は利息が発生しないのも嬉しいところです。

    国の教育ローンにも、「学校在籍期間は利息のみの支払いで良い」という制度がありますが……。
    やはり利息は少ないに越したことはないため、この点では奨学金の方が優れていると言えるでしょう。

    ちなみに、100万円を国の教育ローンで借りたとき、1ヶ月あたりに発生する利息額は約1,452円です。

    100万円 ×年利1.71% × 31 / 365 =1,452円

    卒業まで4年間、利息のみのご返済(元金据置)とすると、この利息が48ヶ月分掛かってきます。つまり、国の教育ローンの場合、4年間元金据置とした場合の利息合計額は69,696円。

    奨学金では在学中は利息がかかりませんから、これを支払うのと支払わないとでは、大きな違いがありますよね。

    ⑤教育資金については、まずは奨学金がおすすめ

    結論を言うと……。
    基本的には「奨学金」の利用をおすすめします。

    学費や一人暮らしの費用など継続的にお金が必要な場合の他にも、「毎月振込まれる奨学金を口座にプールして前期、後期の納入に支払う」「親権者の経済状態(収入状況)に応じて、リスク対策として備える」といった使い方も可能です。

    もし「奨学金を借りても使わなかった」もしくは「不足分のみ使った」という場合は、卒業時に残額を返還すれば就職後の返済期間の短縮、もしくは返済額を減額することが出来るため、負担が減ります。

    「国の教育ローン」は、学校関係で一時的に多額のお金が必要な状況の時に利用しましょう。

    「教育のために必要な資金を貸す」という点では共通している二つのローンですが、実は混同できないまったくの別物なんですね。

    国の教育ローンと奨学金は併用可能!そのメリットは?

    国の教育ローンと奨学金はまったく別のもの。だから、2つのローンを一緒に使うこともできるんです。
    でも、それってどんな意味があるんでしょうか?

    ①期限までに入学金が必要なときに役に立つ!

    2019年5月時点では、国の教育ローンより奨学金の方が低金利。そのため、同じ金額を借りるのであれば奨学金を利用した方が良いのですが……。

    特に私立大学に入学する場合、合格~入学までにとても大きなお金が必要です。
    例えば青山学院大学文学部の場合、年間130万以上掛かります(参考青山学院大学学部入学者学費等一覧)。

    最初に入学金(16万円)だけ払うにしても、残りの金額(半期分75万円超もしくは全て)を払う2回目の納入期限は、入学前の3月下旬です(参考青山学院大学2018年度入学試験要項)。

    奨学金には入学時特別増額制度もありますが、これは4月分の奨学金に上乗せされる形で支給されます。そのため、入学にあたっての学校納付金の支払期限には間に合いません

    このとき、国の教育ローンに事前に申し込んでおけばちょうど良いタイミングで融資を受けられるんですね。

    ②ブラック状態でなければ、それぞれの審査にさほど問題はない

    いわゆる「ブラック状態」と呼ばれる人でなければ、国の教育ローン・奨学金の審査ともに大きな問題はありません。ですが、どちらかと言うと奨学金の方が審査に通過しやすいようです。
    ブラック状態とは、主にクレジットカードや各種ローン、携帯電話の料金を3ヶ月以上滞納した人や、自己破産など債務整理の経歴がある人のことを言います。

    ★それぞれの審査基準については『国の教育ローンの審査』『奨学金の審査』で詳しく解説しています。

    国の教育ローンと日本学生支援機構以外の、教育資金借り入れ方法について

    教育費を提供してくれる組織は、国の教育ローンと日本学生支援機構以外にも存在します!

    ①銀行など金融機関の教育ローン

    あなたが普段利用している銀行やJA、信用金庫といった各種金融機関も教育ローンを取り扱っています。
    基本的に国の教育ローンより金利は高いのですが、一部優遇条件を満たすことで国の教育ローンより低金利になる金融機関も。
    普段からJAや信用金庫を利用しているのなら、一度チェックしてみる価値アリです!

    ちなみに、所得上限制限がないという点以外に、大まかな使い道について国の教育ローンとの違いはありません。
    各社の教育ローン比較については『国の教育ローンについて:国と民間の教育ローン比較』を参考にしてみてください。

    ②大学独自の奨学金制度

    主に成績優秀者を対象として、大学から給付金や学費免除を受けられることがあります。
    返済の義務があるものやないもの、一度きりのものや継続的なものと、大学や奨学金制度によって詳細は様々。
    給付や免除の期間、また1年間(学年単位)や成績により権利が失われる場合もある点には注意しましょう。
    充実度の差はあれ、ほぼすべての大学で独自の奨学金制度は行われているので、まずは進学する学校の公式HPを見てみましょう。

    例:慶應義塾大学の学内奨学金制度の一部(返済義務のないもの)

    奨学金名対象支給予定金額(年額)採用予定人数
    慶應義塾大学給費奨学金学部
    (私費外国人留学生可)
    50万円310名程度
    慶應義塾大学大学院奨学金大学院
    (私費外国人留学生可)
    50・60万円
    (研究科による)
    220名程度
    修学支援奨学金学部・大学院
    (私費外国人留学生可)
    学費の範囲内110名程度
    慶應義塾維持会奨学金学部50・80万円
    (学部による)
    130名程度
    創立150年記念奨学金 海外学習支援(年3回)学部10・20・30万円70名程度
    東日本大震災被災塾生特別奨学金学部・大学院学費の範囲内

    <一部の大学校なら、授業料免除どころか給料が出ることも>

    「防衛大学校」「防衛医科大学校」「海上保安大学校」「気象大学校」「航空保安大学校」といった、入学時点で国家公務員とみなされる一部の国立大学校に入れば、授業料が掛からない上に給与を受け取ることができます。

    加えて卒業後の進路が保証されていることもあり、人気の高いこれらの大学校。

    入学するのは大変ですが、経済的な理由で進学を諦める前に検討してみるのもアリでしょう。

    ③都道府県や市町村の奨学金制度

    都道府県や各市町村も、奨学金を取り扱っていることがあります。こちらも大学独自のものと同じく、その性質はバラバラ。
    ただし、東京都や新宿区のように、高校生や高等専門学校生のみを融資の対象としていることも多いので必ず申し込み条件を確認しておきましょう。

    ④新聞奨学生

    各新聞社が行っている新聞奨学生の制度。新聞社の業務を行う代わりに学費を負担してもらう制度のことで、払ってもらったお金について返済の義務はないのですが……。
    実際は拘束時間がかなり長く、学問と両立することが困難になることも多いようです。よく検討した上で申し込みを行いましょう。

    ⑤一時的な借り入れなら銀行カードローンや多目的ローンも

    入学金や施設設備費、教科書代など、一時的にお金が必要なら、各種銀行カードローン多目的ローンの利用もアリでしょう。
    例えば三井住友銀行の場合、銀行カードローン金利は1.5%~14.5%、多目的ローン金利は5.975%(無担保)。
    いずれも国の教育ローンより高金利ですが、確実な収入の予定がある場合または保険の満期がある場合など、すぐに返済可能であれば大きな違いは生まれません。

    ★各種借り入れ方法の比較(三井住友銀行の場合)

    金利借り入れまでに必要な時間利用用途
    教育ローン(無担保)3.475%数日間教育関連費のみ
    多目的ローン(無担保)5.975%数日間自由
    (使い道を証明する書類必須)
    カードローン1.5%~14.5%
    ※初回は14.5%が多い
    最短翌営業日※自由

    ※申込完了後の確認事項や、本人確認書類の提出状況によっては異なる場合あり

    

    まとめ

    ★教育資金としては、まずは奨学金の利用がおすすめ。第一種は無利息、第二種でも利率が低い!

    ★国の教育ローンは、入学時に必要な学校納付金や一人暮らしを始めるための費用など、一時的な出費に利用しよう。

    ★とくに私立大学の入学時など、一度に多くのお金が必要な時にはふたつのローンの併用もあり

    似ているようでまったく別モノな二つのローン。お金が必要な場面に合ったものを選択しましょう!

    監修者からのコメント
    大竹麻佐子先生大竹麻佐子先生ファイナンシャルプランナー (CFP認定)
    「親に負担をかけたくない子」「できる限りのことをしてあげたい親」、双方の想いがありますよね。一番の解決策は、コミュニケーションです。
    制度としての違いは、記事で紹介されている通りですが、学生生活を有意義に送り、在学中も、親子連携したやりくりをしていくことが大切です。
    奨学金については、責任を子どもにすべて丸投げではなくフォローしてください。就職後の生活に影響を与えないような資金計画を考えましょう。教育ローンについては、不足分の補完として、返済できる額を検討しましょう。
    

    

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