「間違った相手にお金を振り込んでしまった」
「知らない人からお金が届いてる……」
どちらの場合であっても、誤振込に関するトラブルはとても厄介。
特に片方が組戻し(振り込みの取り消し)に応じなかった場合には、訴訟沙汰となることも少なくないでしょう。
さらに、訴訟を起こしたとしても円満解決できるとは限りません。
今回はそんな「誤振込」トラブルについて、振り込んでしまった方・振り込まれてしまった方、双方の立場よりその対処法をまとめました。
読み終えていただければ、できる限り揉めずに状況を解決するヒントを掴めますよ。
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あなたが間違えて振り込みを行った場合に取るべき方法
まずは、あなたが誤振込を行った場合の対処法について解説していきます。
★誤振込を「された」場合の対処法については、当該項目をご覧ください。
★この項目では、「存在する」口座へ誤って振込みを行った場合について解説しています。
実在しない口座番号へ振込みを行った場合には、3~4営業日ほどで振込手数料を差し引いた差額があなたの元に帰ってきます。振込先口座が存在しているか分からない、という場合には金融機関へお問い合わせください。
①まずは振込先金融機関へ「組戻し」手続きを行い、返答を待とう
間違えて知らない相手に振り込みを行ってしまった……。
そんな場合には、まず振込元の金融機関(あなたが使った金融機関)へ「組戻し」手続きを行ってください。
組み戻しとは何ですか。
組み戻しとは、振込人から受取人の口座に振り込まれた資金を、振込人により受取人へ資金返却の依頼を行うことです。
ただし、ご依頼いただいても必ず受取人から資金が戻ってくるわけではありません。
いったん受取人の口座に入ってしまった資金の返却には、受取人の承諾が必要になります。
受取人と連絡がとれ、承諾が得られた場合にのみ資金をお戻しすることができます。
※組戻手続は、銀行間で連絡を取り合い、それぞれの銀行が自行に口座をお持ちのお客さまへの連絡を行います。また、受取人の組戻承諾には書面等による本人認証が必要なため、お手続きには大変時間がかかります。
(PayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)公式HPより)
組戻しの方法は金融機関によって異なりますが、「(金融機関名) 組戻し」で検索を掛ければ解決できるでしょう。
例えば三菱東京UFJ銀行のインターネットバンキングで組戻しを行う場合は、電話での手続きが求められるようですね。(支店窓口で誤振込を行った場合は、支店窓口へお問い合わせください)
組戻しの手続きをご希望の場合は、三菱東京UFJダイレクトご契約カードをお手元にご用意いただき、テレフォンバンキングにて組戻しのお手続きを行ってください(インターネットバンキングではお取り扱いしておりません)。
(中略)
組戻しには振込組戻手数料864円(消費税込)がかかります。
(三菱東京UFJ銀行公式HPより)
ただし、PayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)の公式HPにもあるように一度相手方の口座に入ってしまったお金は、受取人(口座名義人)の了承無く返還してもらうことが出来ません。
金融機関にできるのは、あなたの依頼を受けて誤振込先にお金を戻してよいか、先方に確認することだけ。
ここで了承をもらえれば、あとは金融機関の指示に従い手続き(主に窓口か郵送で行う)を済ませ、手数料(864円が多い)を支払うことでお金が戻ってくるのですが……。
受取人と連絡がつかなかったり、返金に応じてもらえなかった場合には、金融機関に頼らない方法を取る必要があるでしょう。
★返金依頼は金融機関を通してのみ行われます。
個人情報保護の観点から、あなたが誤振込先の住所や電話番号などを教えてもらうことはできません。当然、直接連絡を取ることも不可能です。
★誤振込を行ってしまった場合には、何らかの方法で振込履歴を保存するようにしてください。(通帳への記帳、インターネットバンキングの場合はスクリーンショットなど)
相手先の銀行口座番号とカタカナ名だけでも分かれば、次の行動に移れます。
②組戻しに応じてもらえない場合には裁判所や専門家の力を借りる必要も
組戻しの依頼を出して、1週間くらいが経ったら申請先の金融機関へ現状を確認してみてください。「相手方と連絡がつくか、つかないか」「相手側に返金の意思があるか」程度であれば教えてもらえることでしょう。
さて、それでは……
- 連絡が付かないまま1ヶ月ほどが経過した
- 相手方に手続き書類を送っていると聞いたのに、1ヶ月程経っても音沙汰がない
- 支払いの意思が無いと言われた
といった場合、あなたが取るべき行動とは何なのでしょうか?
誤振込の咎はあなたにあるとしても、本来そのお金は相手方に振り込まれるはずのないお金。このような財産を法律用語で「不当利得(不当利益)」と言います。
これに関しては、民法に明確な記載がありますね。
★民法703条
法律上の原因なく
他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度※において、これを返還する義務を負う。
この条文を使い、あなたはお金を返してくれない相手に不当利得請求を行うことができます。
実際に行動を行う前に、金融機関を通しこの旨を伝えておくと良いでしょう。(「〇〇日までに返答がない場合、法的手段に出る」など)
ただし問題となるのが、その請求先。
誤振込先が会社だった場合など、請求先がハッキリしているのなら直接電話で交渉することも、それに応じてもらえないときに訴訟を起こすこともできますが……。
どこの誰かも分からない、カタカナ名の個人だった場合にはそうも行きません。
この場合は裁判所の「調査嘱託」制度を使うか、弁護士さんへ依頼して「弁護士照会」を行ってもらう必要があるでしょう。カタカナの口座名義や口座番号をもとに、高い確率で相手方の住所など、訴訟に必要な情報を入手することができるようです。(ただし100%とは言えないとのこと)
誤振込の金額が60万円以下であれば、調査嘱託と併せて「少額訴訟」という制度を使い、比較的簡単な手続きで、安価に裁判を起こすことが出来ます。(費用は安くて1万円も掛からない程度、請求金額などにもよる)
この場合、まずは裁判所に出向き必要な書類や手続きを確認すると良いでしょう。
一方、訴訟額が60万円を超える場合には弁護士・または司法書士といった専門家の力を借りるのが無難かと思います。
報酬はピンキリなようですが、一般法律事務所の弁護士となると30万円前後が相場でしょうか。
司法書士さんに依頼する場合や、法テラスを利用する場合にはもう少し費用を抑えられることでしょう。
★もちろん請求できる金額に費用や労力が見合わない場合には、請求をあきらめることもご検討ください。
★行政による支援センター「法テラス」を使えば、無料での法律相談が可能です。
こういった法律トラブルが起きた際には、専門家の助言が何より大事。請求額にかかわらず、不明点がある場合にはぜひ相談を検討してみてください。
ただし法律事務所に比べると、予約から相談まで待たされることは多いです。
CHECK法テラス公式HP
★裁判の結果、相手方に支払い義務が認められれば一括または分割払い、もしくは差し押さえなどを実施する形で返還を受けることが出来ます。
※「利益の存する限度」とは「誤振込のお金が残っている限り」、つまり誤振込のお金を使い果たしてしまった場合には支払い義務が無いとも読めますが……。
このケースの場合、誤振込に気付かなかったとしても受取人に「お金の管理を怠った」という過失が発生するため、お金が使われてしまった場合にも請求は可能とされています。
③相手方が「誤振込だと分かってお金を使った」のなら、警察への相談もアリ
レアケースではありますが、相手方が「誤振込だと分かってお金を使ったことが明らかな場合」であれば、刑事事件ともなり得ます。この状況に限っては、警察へ被害届を出すための相談を行っても良いでしょう。
誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求することは,詐欺罪の欺罔行為に当たり,また,誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから,錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する。
とは言え、「誤振込だと分かってお金を使う」ことを証明するのは大変。
具体的な状況としては、「個人が受け取るとは考えにくいお金を入金してしまった場合」「口座名義をもとに直接連絡を取ったが、お金は返さないし使ってしまったと言われた場合」などでしょうか。後者の場合は証拠となる音声などが必要になりそうです。
★詐欺罪は「銀行窓口係員に対し」成立します。
そのためATMからお金を引き出した場合には、窃盗罪が適用されるようですね。
これは不当利得請求に限ったことではありませんが……。
最低限度の生活を保障するという前提上、お金を持っていないところからお金を取ることはできません。
例えば「誤振込先が生活保護受給世帯で、差し押さえができるような財産もない中、誤振込のお金を全額使い果たしてしまった」という場合には、あなたが泣き寝入りをしなければならない可能性が非常に高いです。
こういった場合、どんな凄腕の弁護士を付けても満足いく結果がでることは無いでしょう。
★財産が無くてもある程度の所得を得ている方が相手なら、給与や預金の差し押さえ実施が可能です。
不当な振り込みで現金を手に入れてしまったら、どうすればいい?
誤振込をはじめとする「法律上の理由なく得た利益」を指す「不当利得」。
図らずしもこれを手に入れてしまった場合、受取人は返還義務を負うとされています。(民法703条より)
つまり相手方に誤振込という過失があったとしても、いわれのない利益は返さなければ民法違反=訴えられれば負けてしまうということですね。
さらに、誤振込を知ってそのお金を使ってしまうと詐欺罪や窃盗罪が適用されてしまいます。
それなら先方から連絡が来るまでお金を使わず放置しておけば良いのかというと、そういうわけでもありません。
★民法704条
悪意の受益者※は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
※「不当利得(この場合は誤振込)の受け取りを知った人」を指す
つまり、お金の受け取りを知った上で放置していた場合、余計な利息を請求される可能性があるわけですね。
利息制限法に基づくと、誤振込の金額が10万円~99万9999円の場合、利息は年18%。
誤振込の金額が50万円で1年後に支払いを請求された場合、最大9万円を利息として支払うことになってしまいます。
実際のところは誤振込を行った側にも過失があるため、よほど悪質でない限り利息を請求されることは無いかと思いますが……。あえて危ない橋を渡る必要もまた無いでしょう。
もしも誤振込を受けてしまったら、あなたが口座を受け取った金融機関へその旨を伝えるのがベスト。
あとは金融機関が、先方へ連絡を入れてくれるはずです。
CHECKよくある質問:不当利得に関しての時効はありますか?
誤振込に関するよくある質問と回答
最後に、誤振込に関するよくある質問についてまとめてみました。
①不当利得に関しての時効はありますか?
不当利得は債権と同じ扱いとなるため、時効は10年間で成立します。
利息の請求権についても同様ですね。
②誤振込のお金を気付かずに使い込んでしまいました。返還請求をされていますが、払えません。
基本的には、先方と直接または裁判で交渉の上、分割払いで少しずつ支払っていくことになるかと思います。法律でいう「善意の受益者」だからと言って、不当利得の返還義務は無くならないんですね。
ただしあなたが生活保護受給世帯、あるいはそれに近い状況であるのなら、その限りではありません。
★支払うべきお金を支払わないと、差し押さえなどの処分を受ける可能性があります。
特に給与が差し押さえの対象となった場合、社会的信用を喪いかねません。お気をつけください。
CHECK差し押さえについて
★カードローンやクレジットカードのキャッシング枠を利用し、賠償に充てるのも手段の一つではあります。ただし消費者金融などの無利息サービスを利用する場合を除き利息が発生するためおすすめはできません。
③不当利益返還請求訴訟を起こされました。裁判に出ないとどうなりますか?
先方の言い分が100%通り、預金や給与が差し押さえ対象となる可能性が高いでしょう。
分割払いを認めてもらうなど少しでもあなたにとって良い結果を得るため、不利な状況であっても裁判には出廷してください。
まとめ
- 誤振込を行ってしまったら、振込を行った金融機関へ「組戻し」手続きを行おう!ただし良い返事が返ってくるとは限らない
- 組戻しがスムーズに行かなかった場合、お金を取り戻すためには裁判所や弁護士の力を借りる必要がある。この場合、カタカナの口座名義・口座番号だけでも訴訟に必要な情報を開示できる可能性あり
- 誤振込を受けた場合、その事実に気付いた場合でもそうでない場合でも返還義務を負う(=訴えれば、誤振込した側が勝つ)。できるだけ早く金融機関に相談しておくのが最も安全
- 誤振込されたお金をそれと知って使ってしまうと、詐欺罪や窃盗罪に問われる危険性あり
銀行振込のミス1回で、裁判沙汰となってしまうことは珍しくありません。
とくにあなたが誤振込を行った側の場合、さまざまな要因が絡むことから「100%こうすれば安心」と言い切ることはできませんが……。
トラブルが大きくなる気配を感じたら、できるだけ早い段階で法テラスの無料相談を利用するなどして、専門家の指示を仰げると良いですね。
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