損害賠償が払えない時の対処法

損害賠償が払えない時の対処法

「交通事故を起こして多額の賠償金を請求されたけれど、こんなの到底支払えない……。」

結論から言うと、保険がきかない限り賠償金の請求から逃げ切ることはほぼ不可能です。
支払い義務を果たさないと、結局は差し押さえや強制執行といった処分を受けることになってしまいます。

一括での支払いが到底ムリ、ということでしたら被害者などと話し合い、分割払いなどを受け入れてもらうしかありません。

今回は多額の賠償を請求されてしまったときの対処法と、「こんな時はどうなるの?」といったよくある質問をまとめました。
読み終えていただければ、あなたがこれから取るべき行動が分かりますよ。

目次

とても支払えないような損害賠償を請求されたら

任意保険に加入していない状況で自動車事故などを起こし、とても支払えないような損害賠償を請求されたら、あなたは何をするべきなのでしょうか?

過失があなた側にあり、完全に支払わざるを得ない賠償であるのなら、支払いから逃れることはほぼ不可能です。
例外としては「一切支払い能力がない」場合くらいでしょうか。

尋常な「お金を稼ぐ能力」があるのなら、現在の貯蓄や財産の有無にかかわらず責任を取らなければなりません。

確かに時効は存在するものの……。
時効が成立するまで被害者側が見過ごしておく道理はありません。

仮に加害者側に支払いの意志がない場合には裁判所から「差し押さえ」や「強制執行」の判決が下り、給料の一部を強制没収してでも賠償を行うことになります。

そういうわけで多額の賠償を支払えない、というときには相手側と「分割払い」や「猶予」(支払いを待ってもらう)の交渉を行うことになるでしょう。場合によっては弁護士を挟むこともあります。

金額にもよりますが、相手側からしても裁判を起こすよりはスムーズに事が進んだ方が良いはず。
どうしても支払えない、と思ったらまずは今後の支払い方法について相手側(もしくは相手側の弁護士)と相談するようにしてください。

保険に加入している場合には、迅速に保険会社へ相談を行ってください。

こんなときはどうなるの?損害賠償請求に関するよくある質問

ここからは、状況別のよくある質問にお答えしていきます。

①自己破産することで損害賠償の支払い義務はなくなりますか?

あなたの過失が以下のものに相当しないのなら、免責が下りる(支払い義務がなくなる)可能性はあります。

  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償
  • 人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償
  • その他税金、罰金など

(参考:破産法二百五十三条)

どちらにせよ自己破産を行うためには、弁護士や司法書士といった専門家の手助けがほぼ必須となります。
この場合は損害賠償に強い弁護士へ相談を行い、自己破産をすべきかどうか判断を仰ぐことになるでしょう。

②請求額や請求の事実自体が納得できないのですが……。

弁護士への相談を行ってください。
特に「会社からミスを理由に多額の損害賠償を請求された」という場合には、裁判を起こすことによって支払いが不要になったり、減額された例が複数あります。
(昭和62年7月27日、名古屋地方裁判所「大隈鐵工所損害賠償」判例など)

また、労働環境などによっては逆に未払いの給与などを請求できるかもしれません

③生活保護を受けていても、損害賠償は支払わないといけないのですか?

無い袖は振れぬ、という言葉があります。
本当に加害者に支払い能力がないのなら、被害者が泣き寝入りせざるを得ないことは珍しくありません。

④裁判の通達が来ました。どうせ支払えないし、無視してもいいですか?

裁判を欠席すると、相手側の言い分が100%認められます。

あなたにとって不利になることこそあれ、有利になることはまずありませんので、支払いの見通しが立ってなくとも裁判には出席し、現状を伝えるなどした方が良いでしょう。

場合によっては請求額の減額などを見込めるかもしれません。

⑤相手方が交渉に応じてくれないときにはどうすればいいのですか?

差押えや強制執行が行われる可能性があります。
過失が加害者にある以上、被害者の意志に口出しはできません。

⑥借金して賠償金を支払うのは得策ですか?

審査に通り、一度に借りて一括支払いできる程度の賠償であればそれも一考でしょう。できるだけ金利の低い借入先を選ぶことをおすすめします。

ただし多額の請求のうち一部を借金でまかなうと、月々の支払いが分散することになり、結果的に支払いが行き詰りやすいためおすすめできません。

⑦配偶者が多額の賠償金を課せられました。私にも支払い義務がありますか?

成人の責任問題ですから、これは配偶者には関係ありません。
当然家計には大きな負担となりますが、あなた自身には一銭の支払い義務も発生しません。これは離婚しても同じです。

あなたに一切過失がない場合に限ります。

借金の絡む問題で、あなたが保証人となっている場合などには支払い義務が発生することがあります。
複雑な事情がある場合には、専門家に指示を仰いでください。

⑧子供が大きな過失を出した場合、その親に支払い義務はありますか?

残念ながら、未成年者の過失の責任は親にあります。
実際に重大な少年犯罪において、その親に数千万円以上の支払い判決が下りた例はいくつもあります。

⑨数千万円単位の請求が来ました。一生損害賠償を支払っていくしかないのでしょうか?

一生掛かっても支払いきれないような請求ならば、誰かの人生を大きく悪い方に変えてしまったほどの過失を犯したのでしょう。
特に自己破産の免責が認められない場合、一生掛かって少しでも責任を取ろうとする他ありません。

ちなみに損害賠償はマイナスの財産となり、相続の対象となります。
一生かかっても支払いができなかった場合、債務者が亡くなった後、相続人が相続放棄を行うことでようやく請求は終了することでしょう。

請求額に納得がいかないのなら、弁護士へ相談を行ってください。場合によっては請求が軽減される可能性があります。

まとめ

損害賠償請求から逃れることはほぼ不可能。強制執行や差し押さえを実施される前に分割払いの相談を行いたいところ
★民事訴訟が行われた場合、裁判所に出向かないと被害者側の言い分がすべて通ってしまう。とにもかくにも裁判には出向いて現状を伝えよう
★損害賠償金の金額などに納得いかないことがあれば、出来るだけ早い段階で弁護士へ相談を!

損害賠償金や慰謝料がどの程度まで認められるか、というのは完全にケースバイケース。

特に請求額に納得のいかない場合には、無料で法律相談のできる「法テラス」を利用するなどして専門家の指示を仰ぐことを強くお勧めします。

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